最近、『稼げる副業を紹介します!』とかの詐欺や、『自称意識高い系の人たちが作るコミュニティに入って、みんなでこの大不況を乗り切ろう』的なサロンが多い気がする。僕も詐欺サロンに騙されかけたことがある。騙される人が一人でも少なくなればいいと思っているので僕の知っている情報を共有したいと思う。とはいっても、僕が勧誘されたのは10年前くらい。まだピチピチの20代真っ只中の時だから、今はもっと巧妙になっていると思う。でも結局は人と人のやり取りなので根幹の部分は同じだから、この記事を見てその勧誘は果たして本当は詐欺じゃないのか、判断の材料にして欲しい。
詐欺師はどんなふうに接触してくるのか
ちなみに僕が勧誘されたのはアムウェイではない。もっとマイナーな一般社団法人なんちゃらみたいな団体がやっていたわけわからんサロンに加入しませんか?みたいなやつだ。
当時はmixi(ミクシィ)っていう今で言うFacebookみたいなサービスが人気で、僕もそれを使っていた。社会人サークルの誘いとかも結構あって、それなりに楽しかったんだ。当時は規制が緩くて、mixiは正規のSNSとしての使い方と、今で言うマッチングアプリ的な側面が混在していた。
実際、それでいろんな人と会ったし、いろんな体験ができた。
でもそういう場には必ず人を騙そうとする輩が、獲物を狙うライオンのような目で右も左もわからない情報弱者を狙っているんだ。
僕へのファーストコンタクトは、とある女性からのメッセージだった。
最初は友達になろう感を装ってくる
その女性(以下B子)は『お笑いが好きなんだ!趣味が合うね』的なコンタクトだった。聞けば年齢は26歳らしい。そして次に『楽しい社会人サークルがあるから一緒にどう?』と来た。暇を持て余していた当時の僕は迷うことなく返事をした。『入ります!』と。
事実最初は健全な飲み会や、ダーツ大会みたいなものや、寿司パーティとかだった。
そして徐々に雲行きが怪しくなってきたんだ。誘ってきたB子が『今度は面白いゲーム会があるんだけど。』と言ってきた。参加費は500円らしい。特に疑問もなく参加したんだけど、キャッシュフローゲームだった。参加者は僕とB子を含めて7、8人くらい。その日は人数が多いらしいので、全員が参加するわけではなく、二人一組でするそうだ。キャッシュフローゲームについてはググってもらえれば詳しくわかるけど、マネーリテラシーがボードゲームで学べます的なやつだ。このゲーム自体は劣化版人生ゲームみたいなものなんだけど、このゲームをつくったロバートキヨサキがネットワークビジネスを推奨してることもあって、よく詐欺師界隈で使われているようだ。ちなみにこのゲームには必勝法があって、とにかく銀行からお金を借りまくって、土地や事業を買いまくれば良い。ゲームバランスなど皆無で、借金しても最後は勝つ!という現実とは乖離したゲームだ。
B子いわく『みんなでこのゲームを定期的にやってお金の勉強をしている。おかげでお金の使い方がわかってきた』とのことだった。そのゲーム会ではしきり役の男性(以下A男)がロバートキヨサキの本『金持ち父さん貧乏父さん』を見せて、『この本を読んだことがありますか?この本は素晴らしい。お金を正しく理解するのに必読の書籍です。そして本の内容を実践的に学ぶゲームが、このキャッシュフローゲームです。とても高額なゲームなので、500円で参加できるあなた達はとても得しているよ。』と言うのだ。反吐が出るぜ。
このゲームは先ほど言った通り、借金しまくった奴が勝つクソゲーだ。でも攻略法を知らない当時の僕は、『うーん、ここは手元のお金を温存して。。。』などと真剣に考えてゲームをしてしまっていた。そんな僕を尻目に、A男が借金しまくって勝ったところでゲーム終了。なぜか負けた者同士で反省会をさせられる。なぜ勝てなかったのか、お金の使い方がわからないからだ。みたいに。いいえ、理由はゲームバランスがクソなだけです。
そしてA男はドヤ顔で『どうですか?お金には使い方があるんです。私は24歳ですが、正しいお金の使い方を学びました。正しい使い方を学べば、現実にこういうことができます。あなた達は負けました。ですが今回ゲームをしたことで、あなた達のマネーリテラシーは一つ上のレベルに上がりました。』
お前はただ劣化版人生ゲームに勝っただけだが?
そしてA男は続ける。『みなさんにさらにレベルアップしてもらうために、特別な勉強会を用意しました。参加費は3000円です。』
勉強会(セミナー)に参加してみた
勉強会はオフィス街にあるビルのレンタルスペースで行われた。
講師は24、5歳の小柄な女性。とにかくこのコミュニティは平均年齢が若いのだ。そして始まった勉強会は、マインドの話ばかりだった。1時間半くらい長いこと喋っていたけど、端的に内容をまとめると以下。
●親世代は右肩上がりの時代だった。でも今は大不況。親世代の言うことを聞いていてはいずれ生活が立ち行かなくなる。
●これからは、一人一人が稼ぐスキルを身につけないといけない時代。そのためには行動しなければならない。
●でも闇雲に行動するのは、一人で太平洋へ航海に出るのと同じ。嵐が来たら一人の船ではすぐに沈没してしまう。
●そこで大切になってくるのがコミュニティの力。志を同じくした仲間達で団結して進めば、荒波の航海にも負けずに進んでいける。
●我々はそういう荒波の航海を乗り切る為のコミュニティ(サロン)を提供している。このサロンに入れば会員専用のワークショップを利用できる。レベルアップの為の研修旅行もある。去年の研修旅行はハワイで行われた。
●詳しくはこの勉強会に呼んでくれた人が後日説明してくれる。
どうだろうか。10年前とは思えないくらい令和の今でも通用しそうな謳い文句じゃないだろうか。そもそも詐欺の根幹は変わっていないんだから、ある程度は同じ内容を使い回しているはずだ。結局、話の根は大体同じで、それに装飾を施しただけ。
そしてなぜか最後に講師が好きだと言うワンオクの曲を聞かされて勉強会は終了した。この勉強会で学んだことは『ワンオクええなぁ』だけだったことは言うまでも無い。
そして後日呼び出される
オフィス街にあるスタバに呼ばれた。すでに2人僕を待っている。最初にこのコミュニティに誘ってきたB子と、キャッシュフローゲームドヤ顔男のA男だった。A男の手にはタブレットPCが握られている。そしてA男の下手くそなプレゼンが始まった。内容は勉強会の時に話していたことそのままで、パワポを使って一生懸命説明してくる。そして本題に移る。
『このサロンには革新的なシステムがあります。まず月額は36,000円ですが、あなたが別の人を入会させると一人につき3,000円が毎月キャッシュバックされます。つまり12人誘えば無料、13人目からはプラスになります。とても魅力的なサロンだから、人を集めるのは簡単です。これは不労所得です。現に僕も不労所得を得ています。ただ元が非常に価値のあるコミュニティなので36,000円でも安いくらいです。』
出ました。ネズミ講。でもサロン自体の素晴らしさを猛プッシュしてきて、もしキャッシュバックが得れなくても会員になるだけでそもそも価値があるんですよ的なことを言ってくる。
そこでB子が口を滑らせた。『あれ?月額33,000円じゃない。。。?』A男は冷静を装って首を横に振り『ん?違うよ?36,000円ですよ。』
これで少しカラクリがわかってきた。僕の素晴らしく綺麗な図で説明するとこうだ。え?図が汚い?それはすいません。
自分より後に入ってきた人にプラス3,000円して会費を請求する。その時上乗せした3,000円が紹介した人の取り分のようだ。THEネズミ講!
A男いわく、このシステムはあくまで不労所得が入るということを体験するためのもので、メインはスキルアップを目的としたサロン活動とのこと。さらに業界トップ(笑)のFX自動売買ツールも無料で利用できるので、この会費はすぐに回収できると熱弁。そしてとどめの謳い文句がこれ。『このサロンは意識が高い人ばかりなので、そういう人たちが周りにいるという環境が大切なんです。このサロンのワークショップで腕を磨いて副業にチャレンジして本業の収入を超えている人が大勢いるんです。僕も、もう少しで本業の収入を超えそうなんです。この36,000円は自己投資だから。すこし飲みに行くのを減らせば出せる金額でしょ?それで将来的には不労所得が手に入るんだよ!』確かに周りが高いレベルだと、必然的に自分のレベルも上げないといけなくなるので、結果自分の成長につながるということだけには共感できる。でも毎月36,000円も飲みに行ってねぇよ。
すでに怪しさ全開だけど
さて感のいい読者さんはすでに気がついていると思うけど、【高月利を謳うFX自動売買ツール】なるものが出てきた時点で、その話は最悪の部類だと確定だ。詳細は聞いていないが、おそらく訳のわからんド素人が作ったくそ最底辺精度の自動売買ツール(EA)だと推察できる。この手のものは無料と言いつつ、諸々の理由をつけて40万とか100万とかの料金を請求してくる。そもそもA男が言うくらい儲かるのであれば、日銀が採用するって。それで日本の年金問題は解決するし。でも採用されてないってことは詐欺確定。大体90%以上の利用者が毎月10万円以上の収入を得ています!的なやつは全て詐欺!当たり前だけど、そんなすごいシステムなら人に教えずに自分だけで使うって。
そしてこのサロンの絶対に儲からない根拠に、中核メンバーのお金の持ってなさがある。寿司パーティやゲーム会などの開催場所がそのコミュニティの中核と思われる女性の家なんだけど、どうやらシェアハウスらしい。このサロンメンバーの女性4人でシェアしているらしい。その中核の女性いわく『朝が弱いから起こしてもらっている。ここにみんなで住むまで会社に遅刻したりしていた。それに家賃を節約してサロン活動費に回すことで、自分の成長に繋げることができる。』だと。
アホかと。そんな朝もろくに起きれないやつが意識の高い集団の中核なのだ。さらにそのシェアハウスだけど、儲かっているなら一等地の4LDKでも借りればいいのに、築30年ほどの古い集合住宅の一室だ。最寄駅からも少し遠く、およそ7万5千円ほどの2DKだ。そこに4人なので1人あたり18,750円だ。そこまで節約しないといけないかと。そして中核の女性が笑い話としてこう言った。『まだ○○ちゃん(一緒に住んでいるメンバー)から先月分の家賃もらってないんだよー!私が立て替えてるの(笑)』と。
つまり18,750円が払えんほどに困窮するくらいこのサロンに入るとすごい儲かるし、こんなに意識が高い人たちが集まるからすごい成長ができるそうだ。笑っちゃうわ。
詐欺サロンは現代版ヤバい新興宗教
こういう詐欺サロンには宗教じみた雰囲気が漂っている。のめり込んでいる人たちは洗脳されているのだ。妄信的にサロンの指導者を崇拝し、その指導者の考えを真似ようとする。サロンに加入することが、この世の唯一の救済であるかのごとく勧誘してくる。だってそいつらは本当に素晴らしいものだと思い込んでいるから。
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)が開発及び発売したプレイステーション2用のホラーゲーム『SIREN(サイレン)』というゲームをやったことがあるだろうか?屍人というゾンビのような敵がいるんだけど、この屍人には世界が素晴らしいものに見えており、この素晴らしさを分かち合うために人間を襲い、屍人化させようとする。
詐欺サロンに勧誘する人は大体その勧誘する人自体も騙されている。というか、ひどい場合は洗脳されている。そしてその人には騙すという感情はない。むしろ素敵な世界に導いてあげる!みたいに思っているかもしれない。まるで屍人みたいだ。
『とても素敵なサロンなんだよ!カリスマの○○さんの話が聞けるんだ!』
『意識の高い人たちばかりのコミュニティなんだ。成功するにはそういう環境に身を置くことが大切だよ!』
『自己投資だと思って入ってみな?でも強制はしないけどね。私は行動するきっかけを渡しただけ』
こういう人たちに関わってはいけない。こんな文言を言う人とはすぐに絶縁したほうがいい。
断ってやったらこうなった。
その場で即断ったら話が長くなりそうだったので、『すごい興味があるから、一度家に帰って検討したい。なんなら友達も誘おうかと思っている』と言うと、A男は『ぜひ友達にも進めてください!では連絡お待ちしています。あ、連絡はB子さんにお願いしますね!』と言っていた。僕を連れてきたのがB子なので、僕の窓口はB子ということらしい。帰り際にB子が声を掛けてきた。『とてもいい話でしょ?一緒にスキルアップして行こうよ!』と。
そして家に着くなりB子にLINEした。『サロンへ加入はしません。ありがとうございました。』
すぐに返信がある。
B子『一度会ってお話ししましょう。』
こわいこわいこわいーー!なんで急に敬語やねん!
そしてB子をブロックして今回の一件は幕を閉じた。奴らからしても、金のタネになる僕を時間をかけて洗脳したつもりだったんだろう。だからもう一度会って話すとあの手この手で引き込もうとしたに違いない。本当に素晴らしいサロンなら、そんなことしなくても入るって。
自己成長系詐欺を防ぐ2つの名言
とにかく僕が言いたいのは、楽して成長できるものなんてこの世に存在しないと言うこと。詐欺師は甘い誘惑をしてくる。『これが成長への近道だよ!』『みんなが知らない手法を教えるよ!これで周りを出し抜こう!』などなど。でもそんな一発逆転はない。ここでイチローの名言を紹介したいと思う。
『小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道』
(2004年のアテネオリンピックでのインタビューの際に言った言葉)
東大に合格する人は小学校から必死に勉強している。オリンピックの金メダリストは幼い頃からその競技の練習をしている。たまにメディアで『始めて数年でトップクラスに!』みたいな紹介をされる人がいるが、決して近道を使っているわけではない。もうひとつ名言を紹介したい。ボクシングのレジェンド、フロイド・メイウェザー・ジュニアの言葉。
『お前らが休んでいるとき、俺は練習している。お前らが寝ているとき、俺は練習している。お前らが練習しているとき、当然俺も練習している』
(原文:"While you guys are sleeping, I'm working. While you guys are resting, I'm working. While you guys are procrastinating, I'm working. When I get to the site, I'll be ready.")
もし今あなたが何かしらの勧誘を受けている。もしくは高額セミナーに参加しようとしている時に、この二つの名言を思い出してほしい。あなたのやろうとしていることを、イチローとメイウェザーが聞いたらなんて言うだろうか。
今も詐欺は無くならない。と言うより人間がいる限り無くならない。詐欺は非常に古い歴史を持っている。文書による最も古い詐欺の記録は、エジプトのパプルス文書に残されている紀元前3000年頃のものだそうだ。この文書には、詐欺師による金銭をだまし取る様々な手法が記載されているらしい。紀元前から詐欺師はいるのだ。なので詐欺にかからないようにはどうするか。甘い誘惑には裏があることを肝に銘じよう。世の中は騙そうとする人がうじゃうじゃしている。みんなも自己成長の近道を行こう!的な話には気をつけてください。